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社長通信

第195号 侵略

2004年05月号

 GWに昔の満州の都市であった瀋陽と大連に行ってきました。初めて中国に行ったのは、日中の国交が回復してすぐですから、約30年前になります。その時は、北京、天津、上海、広州、香港と回りました。当時、日中便は週に数十便(現在は1000便以上)しか飛んでおらず、上海からの帰国便の座席が取れません。仕方なく蒸気機関車が牽引する列車で40時間近く揺られ、予定に無かった広州経由して香港から帰国したのです(帰りの便を予約していなかったのは、その頃のビジネスの相手が国営企業で、直接の交渉相手が全て役人のため、彼らのあまりにルーズな仕事ぶりから帰国の予定が立たなかったからです)。煤煙で鼻の穴は勿論、顔まで真っ黒になってしまいました。

 あの頃の中国は、建物も戦前の古いものばかりで、貧しさを絵に描いたような国でした。人々は全て色気の無い人民服オンリー。更に女性はと言えば、誰もがおかっぱで化粧はしていませんから、美しいと見惚れる人は皆無でした。道路はバスと中国製の不恰好な乗用車、大量の自転車が溢れていました。そして歩道にはイナゴの大群のように、人がいっぱいで人民の海そのものでした。ところが、貧しい人ばかりなのに、ホテルの部屋の鍵を掛けずに出かけても、何一つ無くなることが無いほど治安の良かった時代でした。

 最近の中国の大都市は、東京と見間違うほどに高層ビルが林立し、道路はいつも大渋滞。化粧をし、色とりどりの服装に身を包んだ女性たちは、銀座のそれと変わりません。整形美容院の看板がやたらに目に付きます。そして、13億国民の平均年収が10万円と言われるのに、1千万円以上のマンションや、500万円もする車が飛ぶように売れています。資産1000万円(日本の感覚では1億円)以上の国民が5000万人いると言いますから、貧富の差は想像を絶するものがあります。官民を問わず裕福な生活をしている中国人は、表向きの収入だけではなく、税金を払わない別途収入を持っていると言うのが、公然の秘密となっています。

 このような貧富の差の原因となっているのは、中国の「戸籍」だと言われています。それはわが国のとは全く違ったもので、農村籍と都市籍にはっきり分かれていて、農民が豊かな都市へ移り住むことは出来ません。生まれた時から生きる場所さえ決められているのです。しかし、居住を自由にすれば、人口の7割以上が農民ですから、その1割にあたる1億人近くが都市に移ったとしたら、急激な人口増加によって都市機能がパンクすることは目に見えています。結局のところ、13億の人民を治めるには強権政治しかなく、共産党の一党独裁は仕方の無いことかもしれません。

 ところで、私の訪れた大連は、戦前には日本人がいっぱいいた都市です。そこに基盤をおいた南満州鉄道株式会社(満鉄)は多くの幹線鉄道を敷設しましたが、その本社、病院、社宅等が今でも健在で、当時の日本人の活躍を忍ばせます。大和ホテルは旧満州の都市には何処にでもあった日本のホテルですが、今も高級ホテルとして稼動しています。敗戦によって、これらの莫大な資産は中国に取られました。しかし、彼らにしてみれば、元々中国のものである土地に、中国人を安い賃金でこき使い、中国の資源を使って建設した鉄道や建物であるから、中国のものであるとの認識があります。日本人は彼らをチャンコロと呼び、差別や非人道的扱いをしたこともあったと思います。イラクでも米兵がイラク人を虐待して問題になっていますが、人間は自分の所属する集団の人種・民族・意見・価値観・宗教・文化・習慣・主義・組織等が一番正しくて優れており、絶対であると思い込んでいます。そして、自分とは異なったそれらを持っている人間を蔑むことによって、虐待が起こってしまうのです。一方、人間はどんなに貧しくとも、人としての尊厳(人格)、誇り(プライド)、生きる権利を失う扱いを受けた時、テロリストではなくレジスタンスとして加害者や支配者に立ち向かっていくものです。それが現在イラクで起こっている悲劇の根本原因であると、私は思うのです。中国における居住制限も同じ問題を抱えていると思います。  

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