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社長通信

第222号 終焉

2006年08月号

 あと1ヵ月後には小泉さんに代わる新しい総理大臣が生まれます。小泉さんは「改革なくして成長なし」という至極単純なキャツチフレーズだけで5年間も日本を支配してきましたが、彼に国民が期待したのは、官僚に無駄使いを止めさせ、強力に財政改革を推し進めることでした。確かに道路公団と郵政事業の民営化は、成し遂げましたが、それについても功罪さまざまの意見があり、その成果は歴史の判断を待つしかありません。それ以外に彼が実施したのは、医療費の国民負担の増加など、社会保障の削り込みでした。自己責任によって金持ちや貧乏人が生まれることは仕方が無いことと割り切ってしまうのは簡単ですが、今後、落伍者の社会的負担が増加することは間違いありません。アメリカでは全人口の20%が富の80%を握るまでに、貧富の差が拡大していますが、いずれ日本もそうならないとも限りません。

 また、小泉政権の誕生の裏には、田中真紀子さんと云う強力な応援団がいたにもかかわらず、結局は彼女も放逐され、何時の間にか小泉独裁政権に衣替えしてしまいました。彼が政権の座にいる間に、自民党は選挙戦を小泉さんのキャラクターだけで勝ち進んできたために、派閥の力がすっかりそがれ、ほとんど機能しなくなってしまいました。

 靖国神社参拝問題では、公人としての、それも日本のトップとしての意識が彼にあるのか、ないのか。彼は、「個人の自由」を標榜してやまない男です。それは、世界第二の経済大国日本の総理に全く相応しくない“軽さ”ですが、彼を選んだのは紛れも無く我々国民です。私は、靖国参拝の是非を問うているのではない。ただ、参拝するならするで、公人としての毅然たる態度で臨んで欲しいのです。その靖国問題で、日本と中国、韓国との間で論争となっているのはA級戦犯合祀ですが、その根本にあるのは次のような価値観です。

 春夏秋冬の中で移り変わる風情の中に生きてきた日本人には、他の民族に見られない独特の同族・共同体意識が根付いています。鎮守の杜の神様は、その村で亡くなった祖先の霊が長い月日を経てなったものであり、靖国神社に祀られている神霊は戦争で亡くなった人々です。その神霊を象徴するのは、名前が書かれた質素な板きれ、お札ですが、ひとたび合祀した霊は火と同じで一つのものとなっているから、分けることはできない(分祀できない)と言います。つまり、我々日本人は、2666年前の神武天皇によるわが国開闢以来の価値観によって行動様式が規定されているのです。

 いずれにしても、手を合わせ祈るという行為は、その人をして敬虔な気持ちにさせるものです。仏壇のある家には毎日手を合わせ拝む習慣があります。早朝の公園には、朝陽に向かって祈っている人がいます。私が子供の頃、地蔵盆には道端のお地蔵さんに飾り付けをして、供物を供え、村人たちがお参りにくるのを待ったものです。お寺では、日曜学校と称して日曜日ごとに住職さんが紙芝居で地獄の話を聞かせてくれました。お宮さんのお祭りには村人全員が参加しました。お盆や彼岸には家族で墓参りするのが当然でした。そして、正月には、寺や神社に初詣をしましたが、あちらこちらの社寺を巡って、初詣のハシゴをするのが普通でした。

 このように、日本人は、知らず知らずのうちに八百万の神様・仏様を生活の中に取り入れ、それらに手を合わせることによって、常に守られているという意識があります。生まれたときは神社、結婚式は教会、死ねばお寺と、神仏を人生の節目に巧く取り入れているのはまさにその現れです。その神社や寺院を守ってきたのは地域に生きる人々の「コミュニティー(共同体)」でした。しかしながら、個人主義と自己責任が共同体社会を崩壊させ、高度成長とグローバリズムが国民の心を変え、社会を変質させてしまいました。「お金があれば買えないものは無い(堀江貴文)」、「お金儲けが悪いことですか(村上世彰)」と言う人物の台頭は、物質主義・拝金主義をいっそう助長してしまいました。彼らのバックボーンには紛れも無く小泉政策がありました。

 このように、我が日本人は、宗教を上手に生活に取り入れてきましたが、今やその関係も崩壊しつつあります。それが如実に現れているのが、お寺離れ、神社離れです。唯一、人々がお寺に行くのはお墓があるからです。当社が法話会を催しお坊さんとの対話の場を定期的に作るのは、仏教に親しんでもらいたいからです。イスラム教徒のように宗教指導者の一言で爆弾を抱えて自爆するほど、日本人は宗教に入れ込んでいません。それは、ある意味幸せなことかもしれませんが、何かもの足りないという精神的飢餓から免れることはできない。 
心の安寧と物質的満足のバランスは、生きている限り永遠のテーマなのかもしれません。

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