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社長通信

第260号 愛妻

2009年10月号

今月は、23日に69回目の誕生日を迎える妻公子について、のろけてみたいと思います。
 私の家内は、彦根東高校時代の同級生です。彼女との付き合いは、私が早稲田大学在学中、在京同級生たちに呼びかけて、高尾山へハイキングに行ったのがきっかけです。その当時、彼女は文化服装学院の師範科に在学していましたが、私との交際は3年生の頃からになります。しかし、3年間の勉強を終えると帰郷してしまったので、それからは遠距離恋愛となりました。
 
 家内の家のことについて書きますと、母親は彼女を生んで数ヵ月後に中耳炎が悪化して亡くなりました。家内には姉が2人いましたが、父親は家内だけを祖父母に預け、再婚・別居しました。祖父母の家に一人残された家内を、祖父母は実の親同然に育ててくれました。その祖母が彼女の帰郷後1年を経ずして末期ガンと分ったのです。祖母に、孫の晴れ姿をひとめ見せてあげたいと、私と家内は、私の大学の卒業式を目前にした昭和38年3月8日、当初の予定を1年繰り上げて挙式しました。

 大学を卒業した私は、会社の跡継ぎとして、父親が社長をしている30人足らずのバルブメーカーに専務として入社しました。ところが、入社して驚いたことに、会社の財政は想像以上に悪化していて、火の車そのものでした。入社して半年も経つと主たる仕事は資金繰りでした。入社1年後の昭和39年5月に長男が生まれましたが、資金繰りがついてほっとして帰宅し、子供の笑顔に接すると、その疲れも吹っ飛んだものでした。
 気の毒なのは家内でした。嫁に来るまでは想像もしなかった、夫や舅が資金繰りに追われる地獄の日々を目の当たりにしたのです。その地獄も長男誕生から半年後の12月中頃に終わりました。とうとう資金手当てに行き詰まり、不渡り手形を出して銀行取引停止、即ち倒産となったのです。人間とは不思議なもので、倒産するまでは何とかしなければと、あがきにあがき、深みにはまっていきましたが、倒産した途端、胸のつかえがすっと取れて、すっきりしたのです。しかし、つかえは取れたものの、年末だというのに越年資金がまったくなくて、お正月の唯一のご馳走が鶏皮だったことを覚えています。

 負債総額は1億円でしたが、現在の金額ならば10億円位になるでしょうか。社長である父は体調を崩し入院してしまったため、専務の私が議長となり2ヶ月間に3回の債権者会議を開き、再建の協力を仰ぎました。早くも2月の終わり頃にはスポンサーを得て、新会社を設立し工場を再開しました。そうしないと工員さんが居なくなってしまうからです。
24歳で倒産に遭遇し、費用が無くて弁護士を頼むこともなく、わずか2ヶ月で整理・再建した経験は、以後の会社経営に大きな影響を与えたのではないかと思います。私は、この経験から、会社は何故赤字になるのか、何故倒産するのか、倒産により周りの人間はどう変わるのかを学習したのです。

さて、新会社はスタートしたものの、スポンサー筋から来た男と意見が合わず、昭和41年、私が26歳のときに、掻き集めた50万円を握りしめ、私たち、親子3人(2人目が腹の中にいたので3.5人)は、ルンルン気分で上京しました。それまでの収入を捨てて、何の当ても無いまま上京することは、家内が一番不安に感じたはずです。しかし、家内にとっては、倒産した会社の人間に対する世間の冷たい目や、9人もの大家族の嫁であることからくる葛藤から解放される喜びの方が、新生活に対する不安より大きかったのです。

 東京での生活は、会社の成長、子供の成長と共に少しずつ豊かになって行きましたが、家内は45年前の経験がトラウマとなって、今でも無駄使いは一切しません。結婚以来、家内には生活資金として必要最低限の額しか渡しませんでしたが、足りないと言われたことは一度もありません。また、35歳から65歳までの30年間は家事・育児の傍ら、自宅で書道教室を開き、貯めたお金をローンの頭金として出してくれたので、比較的大きな家を持つこともできました。

また、家内は、宝石やブランド品には一切興味が無く、また何処に出かけても、どんなに疲れていても、徒歩や公共交通機関を利用し、タクシーを使ったことがありません。さらに、3年間洋裁を学んだお陰で、自分の洋服は勿論のこと、子供のものも彼らが成長するまで総て手作りでした。今では、孫たちのドレスはメイド・バイ・バアバです。

 更に特記すべきは、46年の結婚生活でやきもちを妬かれたことがないことです。夫はもてるはずがないと言うのが本音かもしれませんが、彼女に言わせれば、倒産に比べれば浮気は些細なことだと言います。
 そんな家内は、今、菊作り、カメラ、ピアノ、英会話、旅行と大いに人生を楽しんでいます。これからも精一杯好きなことをさせるのが、長い間苦労をかけた家内に対する、せめてもの恩返しだと、私は思っています。

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