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社長通信

第292号 モラルハザード

2012年07月号

永六輔さんのラジオ番組に、ある小学校で、「給食費を払っているのだから、子供に“いただきます”と言わせないで」と言ってきた父兄がいるとの投書があったそうです。「いただきます」のそもそもの意味を知らず、「お金が全て」の考えを持った親がこのようなことを言い出すのでしょう。
 日本では、伝統的に、食べ物は他の生き物の命をいただくことであり、命をくれた生き物や、それを作ってくれた人に対する感謝を表して、「いただきます」や「ご馳走さま」を使ってきました。私自身も、「いただきます」も「ご馳走さま」も言うことが少なくなりましたが、外食して美味しかったりすると、自然と「ご馳走さま」の言葉が出ます。私の子供の頃は、3食をしっかり食べられることが有り難く幸せなことでしたので、一粒のご飯を残しても、叱られた時代でもありましたが、その日その日に、食事に有りつけた感動が「戴きます」の言葉として、自然と口から出ていたような気がします。ちなみに、英語には「いただきます」や「ご馳走さま」に該当する言葉がないようです。

 さて、三権の長である国会から国政調査権を与えられ、東京電力福島第一原発事故の調査報告をまとめた国会事故調査委員会から、日本語版と英語版の報告が先日発表されました。黒川清委員長の序文によると、事故の根本原因は、日本人に染み付いた慣習や文化――権威を疑問視しない、反射的な従順性、集団主義、島国的閉鎖性などに起因し、「この原発事故はメード・イン・ジャパンだったことを痛切に認めなければいけない」と朝日新聞は和訳しています。
 企業が高度成長を続けていた時代には、組織に属する社員が会社の決めたルールに従って、自社の利益に反しない仕事をしていれば、年功序列で出世することが可能でした。競合他社のない東電は、バブル崩壊後もその習慣が残っていて、安全を追求することは投資を伴い、それは自社の利益を損なうことであると考えていたようです。従って安全投資を避けたい東電幹部のもっとも重要な仕事は、規制当局の役人を篭絡することだったと思われます。
 次に委員会のHPから要点を抜粋してみます。これを読む限り、原子力行政を行っていたのは、経産省ではなく東電そのものであり、さらには東電の驕り、傲慢振りが目に見えるように分かります。
 つまり、東電は、3・11のずっと前から、安全対策の規制化に強く反対し、それを規制当局に働きかけていたといいます。 このような事業者側の姿勢に対し、本来国民の安全を守る立場から毅然とした対応をすべき規制当局も、専門性において事業者に劣っていたこと、過去に自ら安全と認めた原子力発電所に対する訴訟リスクを回避することを重視したこと、また、保安院が原子力推進官庁である経産省の組織の一部であったこと等から、安全について積極的に制度化していくことに否定的であったそうです。
事業者が、規制当局を骨抜きにすることに成功する中で、「原発はもともと安全が確保されている」という大前提が共有され、既設炉の安全性、過去の規制の正当性を否定するような意見や知見、それを反映した規制、指針の施行が回避、緩和、先送りされるように、落としどころを探り合っていたようです。
 最後に、HPでは、本事故の根源的原因は、歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊」 が起きた点に求められるとし、何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である、と結論づけています。

今回の原発事故についての報告をみるに、この背景には「モラル・ハザード」が存在していたと言わざるを得ません。「モラル・ハザード」は、倫理観・道徳観の欠如という解釈が日本では一般的です。英語の本来の意味は別にして、昨今、モラル・ハザード(倫理・道徳観の欠如や崩壊現象)を見ることが多くなりました。私の親世代は、私たち子供に「人様に迷惑を掛けるな」と躾けたものです。つまり、日本では、伝統的に、人としての道を外れない行動をとることを是としてきましたが、私たちは、今、それを世界から求められているのです。

最初の話に戻りますが、お金を払っているのだから食物やそれを提供してくれる人に対して感謝する必要はないとか、組織を守ることや利益を生むためには、「安全は二の次」がまかり通っていたが故に、今回の原発の大事故に繋がったのではないでしょうか。これらの根本原因は、全てモラルの崩壊だと思います。
民主党は嘘をいっぱい言って政権を奪いました。モラル無き政党が政治をしているのですから、日本の未来は当分梅雨空が続きそうです。

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