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社長通信

第302号 村八分

2013年05月号

 最近、地域コミュニティーが崩壊してしまったせいか、「村八分」という言葉を余り聞かなくなりました。「村八分」の元々の意味は、田舎などの集落での付き合いの方法が10通り(10分)あるとすると、8通り(10分の8)の付き合いについては、仲間外れ(除け者)にするということです。ただし、火事と葬式の時だけは除外する(2分)ことが決められていました。火事は、村中総出で消火活動にあたらないと延焼する可能性が高かったし、かつて、葬儀は土葬だったために、遺体を墓地まで運び、深い穴を掘って、遺体が腐敗する前に急いで埋葬しなければならないため、多くの人手が一時的に必要であったためだと思われます。
 いずれにしても、50年前の日本の多くの農村では、農業をはじめ、様々な場面で共同作業が見られました。道路や水路の掃除、祭りの準備、田植えの季節には田圃に引く水の当番、家の棟上げの手伝い、共同墓地の清掃、あるいは付き合いとして結婚式、成人式、老人会、旅行会、病人の世話などがあったと思われます。このような多くの付き合い、共同作業、そして慣習等に従わない人(家)を制裁するための罰則規定として、村八分が存在していたのです。
 しかし、中には強欲なボスが仕切るような集落もあって、そこでは、彼の利益や支配に沿った掟が存在していたようです。そのような集落では、ボスに服従しないと自分自身が村八分になる恐れがあったために、誰もが「長いものには巻かれろ」の気持ちで、ボスに従順であったと思われます。
 先日、ジュニア100メートル走で高校生(16歳)の世界記録を出した桐生祥秀君は、私の母校、彦根市立南中学校の出身です。彼は、私の実家から2キロも離れていないところに住んでいるのに、私の弟は彼のことを知りませんでした。彼によると、桐生姓は彦根に2軒しかなく、彼の住んでいるのは新興住宅地であり、その家族は多分都会から転入してきたのであろうと言うことでした。桐生家がそうだというわけではありませんが、都会からの転入者は田舎の付き合いを面倒と考え、自分から村八分になる人も多く、そうした集落はまとまりが薄くなったように思われます。

さて、我が家は住居を練馬に定めて43年になりますが、この地域には自治会があって、回覧板が回ってきます。我が家でも、年間数百円の自治会費を払っていますが、自治会の行事に一度も参加したことがありません。自治会の運営は、この地域に昔から住んでいる人たちがやっているらしいのですが、その活動内容を知る由もありません。最近は、自治会員の訃報の回覧も殆んどなく、誰が亡くなったのかも分かりません。我が家は、元々地域との付き合いが希薄ですから、訃報に接してもその故人がどんな人だったか分かりません。どうやら私自身、自から村八分を選択していたようです。
我が家の近くに、石神井公園という比較的大きな都営の公園があります。鳩がいっぱいいるのですが、その中に、片足が無く、羽根が抜けて弱々しいのが一羽います。不憫に思う人が餌をあげても、それを、元気な鳩が目聡く見つけ、横取りしてしまいます。鳩は平和の象徴と言われていますが、彼らの世界は弱肉強食そのもので、弱っている個体は群れから追い払われ、仲間外れ=村八分の扱いを受けています。
また、この公園では、ペットの犬の散歩を数多く見かけますが、犬の公園デビューにもルールがあって、躾をしっかりしておかないとペット仲間に入れてもらえません。誰彼かまわず吠えたり噛み付いたりする犬は、トレーナーに預け訓練して、初めてデビューできるのだそうです。
 一昨年、滋賀県大津市で、中学2年のいじめられっ子が自殺する事件がありました。その男子生徒に暴行などの危害を与えた加害者は、遊び友達の同級生3人だったようです。その3人の中のリーダーがいじめの中心だったようですが、そのメンバーはリーダーの言うことには逆らえなかったようです。グループ(組織)では、その成員と同じ行動を取らないといじめの矛先が自分に向いてしまうものなのです。自殺後、被害者の親が警察に被害届を3回も提出したそうですが、受理されず、また、学校も市教育委員会も、いじめと自殺の因果関係が証明できないと逃げの一手でした。この事件は、最終的には、越大津市長が第三者調査委員会を立ち上げ、その報告に基づき、いじめと自殺の関連性を認め、市長が自ら遺族に謝罪して、収束しました。大津市の市長は、30代の若い女性ながら、権威や権力を振り回す警察や教育委員会に敢然と立ち向かい、因果関係の究明に尽力しましたが、その行為は大変勇気のいることだったと思います。当初、警察、教育委員会、学校も自殺はいじめと関係がないという判断をしましたが、これは多分に責任逃れからの判断だと思います。そのような中にも、必ずや良識ある人たちはいたはずで、彼らは真実を語りたくとも、組織の中の村八分を覚悟しなければならず、さぞや良心の呵責に苦しんだことと思います。

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